進藤守は気持ちの中でガッツポーズをする。勉強しておいてよかったと、しかめっ面の山吹薫を横目に口角を上げる。
とにかく患者様の訴える症状が大切ってことっすね!ただの腰痛・・・で済ませない事もしっかりと大切ですよねー!
そう言う事だな。大動脈瘤の症状は一つは破裂によって生じる疼痛、出血が一つの症状、そして破裂前の瘤が周囲の臓器へ及ぼす圧迫の症状がある。
特に出血に関してはそこから、大動脈解離へと名前を変えたり、高度であると血管内の有効な血液量の低下からショック状態や、心臓を包む膜の中へ血液が貯留し心タンポテナーゼという重篤な状態へと移行するので危険ですね。しかし進藤・・なぜそんな得意げなんだ?
別に〜!と進藤は答えつつ、石峰優璃の表情を見る。いつもと変わらぬよく出来た陶器の様な色合いの整った表情をしている。何とも美しいと改めて胸をギュッとする。
一般的に破裂前の大動脈瘤は無症状である事から怖い事だ。破裂後は激烈な痛みと共にその破裂した部位に従って胸部や背部、腹や腰痛など、普段から想像はつかない症状を呈する。そして痛みが強いが大動脈の外へと血液が漏れ出ていない状態を切迫破裂と呼ぶのはもう話したな。
そして圧迫される場所にも注意っすね!嚥下を支配する反回神経を圧迫したのなら嗄声というかすれた声が出る症状が出ますし、食道自体を圧迫して嚥下障害を引き起こす事もあります。そして消化管を圧迫すると通過障害が起きて、長期に渡ると瘻孔が形成され別の重篤な症状を呈する事もあります。
むぅ・・・それに肺を圧迫して血痰も出現する事がある。それにもし破裂したとして、そこからの喀血や吐血といった症状で出現する事もまたある。そして出血性ショックに移行したのならば意識障害やそれに伴う循環不全や呼吸不全と重篤な症状を呈するな。
ちょっと悔しがっているなぁと進藤は内心小気味良い。流石にこの同期ばかりに良い顔はさせられないと・・・最近は努力している事は隠している。
進藤もよく勉強しているな!大動脈瘤自体の症状がほとんど無症状であるから、それによって続発する症状に関してもしっかりと目を向ける必要がある。そこから画像検査で偶発的に発見される事も多いのだからな!。
むぅ。そうですね。何よりもリハビリ中は常に僕らは一緒に居る訳ですから、気がつける事も多いですからね。
そうだな。山吹もしっかり気がつける様になるのだな。
再びむぅ。と口をへの字に向ける山吹を横目で眺めつつ、ちょっとでも山吹に追いつこうと努力したことは決して喋るまいとそう心に決めた。
山吹薫の覚書76
・大動脈瘤は多くが無症状、しかしそれに続発した症状があり、そこから偶発的に発見される事も多い。
・普段からその症状を意識しつつ、念頭に置く。
・こいつ・・・こんなに頭良かったか?
【〜目次〜】
『内科で働くセラピストのお話も随分と進んできました。今まで此処でどんなことを学び、どんな事を感じ、そしてどんなお話を紡いできたのか。本編を更に楽しむためにどうぞ。
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